シニフィアン研究所

1)Φ はじめに

シニフィアン研究所(埼玉県上尾市)のインテグレーター楽歩愛真です。
当研究所では、精神分析(セラピー)という対話療法により心身の悩み相談を受けています。


このサイトでは「トラウマ(PTSD=心的外傷後ストレス障害)」について書いています。
東日本大震災などの自然災害によって、トラウマになられた方も多いと聞きます。
このような事象が原因で、トラウマを被るのは当然のことと考えられます。
ところが、上記のような大きな出来事がないにも関わらずトラウマを受けた人と同じように苦しみ、「安全と安心」を求めている人たちがいることが解ってきました。つまり最初期から「安全と安心」を与えられなかった場合、トラウマとして刻印されている可能性があります。そのような環境を考える時、それはごく一般的な家庭の中でも広く行われ、そして、当事者たちも気付かないうちに「トラウマ」となってしまっている。そのように痛感するようになりました。このことからトラウマについてのサイトを立ち上げました。トラウマについて共に考えてみませんか?
もし、思い当たることがあったら、一度「精神分析」の扉を叩いてみませんか?
詳しくはこちらまでご連絡ください。

☆Twitterアカウントは「シニフィアン研究所 楽歩愛真」です。

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2)Φ トラウマ(心的外傷)とは?―恐怖体験

トラウマ(心的外傷)とは、東日本大震災や阪神・淡路大震災、台風等の大水害や土砂崩れ、社会的異変(事件、事故など)レイプ、虐待などによって【死】に直面するような恐怖体験をする。そして、その恐怖体験によって圧倒的な外力の前での「無力」と「孤立無援」を味わった時、人は【トラウマ(心的外傷)】を負います。
どれくらいの外力がショックとなりトラウマ(心的外傷)となるかは人によって違いがあるので一概には決められませんが、目安となる状況や体験としては
1)恐怖に圧倒される
2)閉鎖空間(家庭や職場など)に居て、逃げられない状況にいる
3)心身共に消耗の極致にまでさらされる
4)見るに耐えない死に様を目撃する
などがあげられます。

このような恐怖体験がそれらに対する通常の反応や行動が無益であり、抵抗も逃避も不可能、もしくは無益だと認識した時、人は「無力感」と「孤立感」を味わいます。そして、様々な自己防衛システムが圧倒され、解体へと向かいます。それだけではありません。現実の危機が去った後でも、長期間持続することにより、トラウマ(心的外傷)となります。

人は皆、自分を守るために「防衛機制」と呼ばれる心的防衛が備わっています。その防衛は12種類あるとされます。「退行」「否認」「抑圧」「分割」「反動形成」「投影」「置換」「摂取」「合理化」「同一化(同一視)」「昇華」「知性化」プラス「逃避」「転移」を加えることもあります。これらの防衛を使って、精神のバランスをとろうとしていますが、それらが破綻、解体することで『症状』となります。同じ状況であっても、トラウマ(心的外傷)となる人とならない人がいます。それは、個々人がそれらの情況で「無力」と「孤立無援」を痛感したかどうかに係っています。つまり、外力をどのように感じたか(書き込んだか)によると言えるでしょう。


☆ 症例 50代女性

ある女性が「テレビを見ていて、なぜか、レイプシーンは絶対見ることができず、立ち上がって部屋を出るか、チャンネルを変えてしまい、時には、体が震えたり、足がすくんで歩けなくなることもある」と言いました。もちろん、クライアントが実際に体験したことも、目撃したこともないのにです。分析して分かったことがあります。
あるとき、幼少期に病弱のため、週に数回の頻度で数年に渡り病院での注射、点滴の体験をしたと母から聞いたことを思い出しました。注射針を刺す度に泣き叫び、逃げ回りついに捕まえられ「布団の上からして!」と言ったらしいと。クライアントもかすかに記憶があると言いました。
病弱だから仕方がないこととはいえ、わずか数歳(2歳くらいから5歳くらいまで)の幼児にとっては
そのようなことの理解はできはしません。ただただ、圧倒的な外力によって、必死の抵抗も空しく
「無力感」と「孤立無援感」を感じていたことでしょう。
このことを思い出し、インテグレーターに語り、そのためのセラピーをしてからは次第にレイプされそうなシーンを見ても、嫌な気持ちはするけれど、以前のような激しい反応をすることがなくなったと語りました。

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3)Φ 震災、虐待、DV、セクハラ、事件、事故

では、どのような出来事がトラウマ(心的外傷)となる可能性が高いのか、例を挙げてみましょう。
1)大震災や大災害
これは、言うまでもないことです。実際に遭遇し、自らの力が全く及ばず、突然、圧倒的な「無力感」と「孤立無援感」を誰もが抱いたことは間違いありません。それだけではなく、目の前で、人や愛着のある動物などの【死】の目撃と喪失、土地や田畑などの不動産や家や船、金銭など財産の喪失、その他、あげれば限りありません。それに加えて、「原子力発電所の放射能問題」が継続しています。

2)虐待・養育(保護)放棄(乳幼児、子ども、弱者)
家庭や施設という閉鎖空間内で行われる場合が多く、「しつけ」や「失敗した」「いじめ」など弱者に向けられています。法的に立ち入りが制限されるために、外部に知られにくい傾向が高いです。最近では、子どもだけでなく、お年寄りなども対象となっています。

3)DV(ドメスティック・バイオレンス)
「同居関係にある配偶者や内縁関係の間で起こる家庭内暴力」と定義されます。
その内容は
・身体的暴力―殴る、蹴る、物を投げつける
・心理的暴力―大声で怒鳴る、罵る、脅す
・性的暴力―性行為を強要する、妊娠、避妊に協力しない
・経済的暴力―生活費を渡さない、働かせない
・社会的暴力―行動の制限(知人、友人家族に会わせない)など以前は圧倒的に男性から女性へだったが、最近では反対も増加傾向のようです。

4)セクハラ・パワハラ・ドクハラなど
・セクハラ(セクシャル・ハラスメント)-性的嫌がらせ・性的おびやかし
・パワハラ(パワー・ハラスメント)同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為
・ドクハラ(ドクター・ハラスメント)看護師を含む医療従事者の患者に対する暴言、行動、態度、雰囲気をも含む全てのもので、悪意、合理的理由の有無を問わず、患者が不快に感じた場合

5)事件・事故
残虐な、見るに耐えない事件や事故に遭遇したり、目撃した場合、自らが遭遇する場合よりも、側で目撃した場合の方が、トラウマ(心的外傷)となり易い場合があります。

6)その他
・幼少期に世話をしてもらえるはずの養育者(主に母親)から、適切な世話を受けられなかった場合
・0歳から保育所や母以外の人に預けられた場合
・母が入院、仕事のために長期不在の場合
・母が側に居たけれど、他の兄弟姉妹との待遇差が顕著な場合
・病気・怪我のため、有無を言わされない治療の経験をした場合
・目撃者となった場合(時には当事者よりも重篤の場合もあります)など

他にも、様々な要因が考えられます。

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4)Φ 幼児虐待・児童虐待 

昨今、テレビのニュースで【児童虐待】や【育児放棄】が頻繁に報道されます。乳幼児や児童は、社会や保護者から無条件「安全と安心」を与えられ、守られるべき存在です。にもかかわらず、大半が大人の勝手な理由により「安全と安心」が剥奪され、虐待されています。だれもが、「どうして?」「なぜ?」と問いかけ、「何とかしないといけない」「親が悪い」「行政の対応が遅い」と語っています。ここでは被虐待児がどのようにトラウマ(心的外傷)を被り、どのような心理状態になるのかを見てゆきましょう。

1)家庭環境

幼児や児童は保護者から保護される存在です。そのために「家」という閉鎖空間があり、外界から保護され
心身ともに【安全と安心】を与えられる環境が通常です。
ところが虐待される環境に居るということは、外的にも内的にも、あらゆる危険にさらされています。一種の「軟禁状態」とも言えます。その上に、暴力、脅迫、命令、放置、無視従わないと食事も与えられないという生命にも関わる状況となります。また、虐待者は世間からも孤立している場合が多い反面社会的に適応するセンスも持っているようです。それゆえ、外界からは不透明となりやすい傾向があります。

2)奴隷化
 
幼児や児童は、養育される弱者の立場にあり、何よりも虐待者は愛着の対象でもあります。だから、自ら進んで虐待者に気に入られようとします。それを利用して、虐待者はストレスのはけ口としたり、逆に、感謝や愛情の表明を要求します。

3)心理的支配

虐待することで、心理的にも支配します。そのために、気まぐれに恐怖を与え、お仕置きをしますが、時にはご褒美も与えます。まさしく「アメとムチ」の両方を効果的に使うことで幼児や児童を、思うがままに操るようになります。
例えば
・お前のためを思って言ってるんだよ
・言うことを聞かないからこうするんだ
・お前のために毎日働いてるんだ
・言うこと聞いたら買ってあげるよ
このようにして、完全に心理的にも支配してしまいます。


☆ 被虐待児の特徴

1)ロボット化
 虐待により、生き延びるために自我意識や他者とのつながりを犠牲にします。そして、思考や感情、判断にシャッターを下ろしてしまいます。この状態を「ロボット化」と言います。ロボット化することで、感覚、感情を捨て、恐怖や憎しみを喪失し、まるで人間であることをやめ、植物になったかのようになります。

2)ダブルシンク
 被虐待児、保護してくれるはずの人によって虐待される現実を、どのように耐えるのでしょうか?あるいは、どのようにやり過ごすのでしょうか?被虐待児にとって、受け止めるには、あまりにも厳しい現実です。自分の悲しい運命を、非常に巧みな心理的防衛手段に訴えるといわれています。虐待の事実は、意識から遮断されて、【実際には虐待は無かった】ことになるか【それは虐待ではない】と合理化したり、弁明したりします。例えば『お母さんが悪いんじゃない、僕が言うこと聞かないから僕が悪いんだ』『お母さんがしたんじゃない。自分で転んだんだ』と言うのです。このように、被虐待児は、過酷な現実を心の中で書き換えるのです。つまり二つの思考(現実)、ダブルシンクを持つのです。

3)ダブル・セルフ=「低められた自己」と「高められた自己」
 被虐待児は、虐待の事実を正当化する体系を作るようになります。「自分は生まれつき悪い子なんだ」と思い込み、だから嫌われて当たり前だと自己評価を落とすのです。そして、「こんな悪い子の自分でも、時には可愛がってくれる」と、自己を高め、虐待者への一時的愛着を持つのです。これが一見「良い子」を作り上げます。ひいては、二つの人格を育て、それらの人格がお互いに乖離することにもなりかねません。

4)身体的特徴
・虐待の痕跡が身体のあちこちに残っている
・過覚醒のために、睡眠・食事・排泄の正常な周期が乱れている
・落ち着きがなく、イライラ感が強く、突然の狂乱・絶望状態になる
・自傷行為をする
・衝動的・脅迫的行為により、危険に身をさらす


以上、大まかに辿ってみましたが、幼児や児童は、大人のように一定の人格が整っているのではなくまさに、人格形成の途上にあることが重要です。その大切な時期に、心身への虐待を受けることは正常な発達、もしくは成長が著しく阻害されることはだれもが想像できることでしょう。それが、「家庭」という閉鎖空間の中で行われていることを考えると背筋が凍りつく思いがします。とは言え、個人情報やプライバシー問題もあり、一個人はもちろんのこと、行政側もなかなか立ち入れない現状があります。また、誰の眼にも明らかな「虐待」でなくとも「ゆるやかな虐待」と呼べる状況もあると感じます。それは保護する側からではなく、保護を受ける子どもの側からの視点に立った時、子どもが「暴力だ」と感じたならそれは紛れもなく、「暴力」であり、時には「虐待」だと言えるように思います。

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5)Φ トラウマ(心的外傷)の症状

トラウマ(心的外傷)を被るとどのような症状が現れるのでしょうか?トラウマ(心的外傷)になるような事象の遭遇した時、誰もが、緊張し、強烈な感情によって通常とは全く違った心身の状態となります。いわゆる「戦闘態勢」です。これは、何らかの危機に瀕したときの正常な自己防衛反応です。

トラウマ(心的外傷)になるのはこれらの行動が無益な時であり、自己防衛システムが解体に向かう時です。そして、その危機が去った後でも長期間持続した時にトラウマ(心的外傷)の症状となるのです。主に
1)過覚醒 2)侵入(フラッシュバック) 3)狭窄の三つに分けられます。
順番に見ていきましょう。

1)過覚醒
 外傷体験があると、人の心身は戦闘態勢に入り、同じ危険がまた襲ってくるのではないかと常に警戒しています。些細な事で驚愕し、苛立たしくなり、常に落ち着かず、不眠など睡眠にも影響が出たりします。例えば、大震災に遭った人は少しの揺れにも過敏に反応してしまうでしょう。このような状態を【過覚醒】と呼びます。その結果、外傷体験の記憶が明確でなかったり、逆に、細部まで鮮明に記憶しているのに、感情が湧かなかったり、感覚器官が働くなくなったり、自律神経の働きも異常になったりします。

2)侵入(フラッシュバック)
危険が去り、長時間経っても、その外傷を何度も何度も再体験します。あたかも現在もその外傷が繰り返し回帰してきているかのように見受けられます。外傷が、元の正常な状態に戻ることをさえぎっているからです。前触れもなく突然、その時の状況や感情が侵入してくる場合がます。これを「フラッシュバック」と言います。生々しい感覚とイメージだけが突然襲ってきます。時には、様々な身体反応(倒れる、一部身体麻痺など)が現れたりもします。言葉で表現することもできない、【凍りついた記憶】の刻印です。「生々しさ」「おぞましさ」「言葉にできないもの」まさしく【死の刻印】とでも言えるもののようです。

3)狭窄 
言葉で表現できないトラウマ(心的外傷)の記憶はその人の意識の狭窄に陥らせ、他者との関係を狭くさせ、人生そのものをも貧しく、「殺風景」にさせてしまいがちです。まるで、人生の時計が止まってしまったかのようであり、心が麻痺し、深い眠りの中にいるかのようです。現実感覚の喪失、五感の鈍磨、時間感覚のゆがみ、離人感などを生みます。このような状態を【解離】と言います。一方、アルコールを飲んだり、麻薬などの力を借りて「解離状態」を作り出そうとする人もいます。また、記憶喪失になったりもします。このように、トラウマ(心的外傷)は、その人の人生そのものを根底から覆し、時には、内的荒廃をももたらしてしまう可能性があります。

 
 

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6)Φ 安全と安心―回復への第一段階

ここからは、トラウマ(心的外傷)からの回復について考えてみましょう。
回復への道は三段階に分けられます。
第一段階 『安全と安心』
第二段階 『語る』
第三段階 『再結合』

ここでは、第一段階の『安全と安心』について考えます。トラウマ(心的外傷)を被った人にとって、まず何よりも大切な事、それは『安全と安心の確保』です。
例えば
・1)危険な対象から離れる、遠ざける
・2)信頼できる人が常に側にいる
・3)危険な対象から心身を守る「安全な環境」を整えるなどです。

1)危険な対象から離れる、遠ざかる

 トラウマ(心的外傷)を及ぼす対象から、可能な限り離れること。これは、最優先のこととなります。トラウマ(心的外傷)を受けた人ができなければ、周りの人が積極的に遠ざけ、まずは『心身の安全と安心の確保』が必須です。


2)信頼できる人が常に側にいる

 その人が信頼できると思える人が、片時も離れず側に居ることが大切です。それは、何よりも安心の気持ちを持てるからです。その信頼できる人は、24時間体制で対応できることを求められます。何よりも絶対の『安全と安心』を感じられることが大切です。なぜなら、トラウマ(心的外傷)を被った人は、裏切られ、見捨てられ、恐怖に襲われ、心身ともに傷ついているのですから!少しの分離であっても「見捨てられた」「裏切られた」「怖い」と感じる可能性が高いのです。


3)危険な対象から心身を守る「安全な環境」を整える

 トラウマ(心的外傷)の状況により、個人だけでは無理な場合も多く、公的な支援と理解も必要となります。特に、自然災害や幼児・児童虐待などの場合は、広範囲にわたる支援が必要です。そして、一時的ではなく、長期にわたって必要な場合が多いでしょう。また、偏見や風評被害などの二次的なことがトラウマ(心的外傷)をより長期化、深刻化する場合も多く見られます。これらに対しても、周りの支援と共に理解が必要となります。

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7)Φ 語る―回復への第二段階

『安全と安心の確保』が整い、時間の経過と共に、徐々にトラウマ(心的外傷)についてのストーリーを語り始めます。外傷のストーリーを想起し、語ることを「物語の再構成」と呼びます。ここからが、第二段階のスタートです。

外傷的記憶は全く言語を持たず、時が静止しています。その外傷に言語を与え、止まった時を動かすのが「語る」ことです。外傷が深ければ深いほど、多大な時間とエネルギーと勇気と根気が要ります。そのためには、常に側にいて支えてくれる唯一人の人、例えて言えば「伴走してくれる人」「適切に世話をしてくれる母のような人」が求められます。もちろん、その人を中心とした幾重もの環境は言うまでもありません。

外傷によって失う大きなものはそれまでの心身の全体的統合感覚だけではなく、その人を取り巻くコミュニティーや人間関係などの「」です。これらの失ったものを一つ一つ語り悼むことを通じてのみ、すべてを失ったように感じていた中にも、決して壊されることの無いものを見い出すことができるのです。語ることは、辛い外傷体験を思い出し、再体験することですから想像を絶する体験となることでしょうが、今度は決して一人ではありません。理解し、共に支え、見守ってくれる「安全と安心」が常に側にあるのですから。トラウマ(心的外傷)から回復し、止まった時計を動かすにはどうしても避けられないことなのです。焦らず、必要な時間をかけて、語りましょう。
そうすれば、必ず外傷体験の生々しさが次第に色あせ、外傷ストーリーは過去の出来事となり、「今」という現在の時の中で、新たな生活を再建し、これからの時に向かって歩み始める希望が持てるのです。

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8)Φ 絆の再結合―回復への第三段階

『破壊された自己と未来を新しく創造すること―絆の再結合』
これが第三段階の課題となります。

「安心と安全」と理解をし、受け止めてくれる環境の中で語ること、このことを通して、新しい今と未来を創り出してゆくことができます。時には、過去に立ち戻ってしまうこともあるでしょう。でもこれは、新たな出発に向けての闘いのために必要なことでもあります。

1)恐怖に立ち向かう

心的外傷を受けてしばらくは、圧倒的な恐怖に対しての完全な受身と無力感に打ち砕かれ、恐怖に立ち向かったり、直面することから逃げていたと言えます。しかし、語ることによって次第に、その恐怖に向き合うことができるようになってきます。そして、破壊された自己防衛システムの再構築をし始めるようになります。

2)自己自身との和解

次に、「私は私の主人である。だから私は私のなりたい私になる」このように理想の自己像を描くようになり、ややもすると「自分にも責任や悪い所があったのではないか?」との考えを持っていたかもしれない。
それらから解き放たれ、傷ついた自己は修復され、それに伴って、他者との結びつきや関係も新たに作れるようになります。対人関係にも緊張が少なくなり、冗談も言うようになり、自己評価も次第に高まってくるでしょう。
このような段階を通して、行きつ戻りつの経過はあってもそのトラウマ(心的外傷)からゆっくり回復してゆきます。


3)外傷の解消に終わりはあるのだろうか?

「それはない」と言うしかないでしょう。受けたトラウマ(心的外傷)は過去のものとはなっても決して消せないのですから。メアリー・ハーヴェイの判断基準を紹介しましょう。
以下の7つを挙げています。
(1)PTSDの生理学的症状が管理できる範囲にまで収まっている
(2)外傷記憶と結びついている感情に耐える能力を持つようになっている
(3)記憶の支配権を持っている
(4)外傷事件の記憶が首尾一貫している
(5)自己評価の損なわれた部分が回復している
(6)重要な対人関係が再建されている
(7)意味と信念の首尾一貫したシステムが再建され、それが外傷ストーリーを包含している


4)絆の再結合

社会との絆の取り戻しと再結合は「私一人ではない」という 発見と共に始まると言われています。この体験が確実、強力、直接なのはグループをおいて他にありません。同じ体験をした人同士のグループや、体験の内容は違ってもトラウマ(心的外傷)体験者同士のグループに参加し、一つのテーマを共有する、語り合うことによってその絆を繋ぎ、その輪を少しづつ同じグループ以外にも広げることによって、周りの社会との絆を新たに再結合していけるようになるのです。


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9)Φ おわりに

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Webマガジン月刊精神分析&分析家ネットワーク



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 大沢秀行氏(インテグレーター名:惟能創理)の精神分析を受け、インテグレーター(分析家)を目指し理論を学んだ人たちが、東北・関東・関西を中心に実際にインテグレーターとして活動しています。  夏には、那須で恒例の「分析サミット」が開かれ、症例報告・研究などの研修会も行っています。  私たちインテグレーターを紹介します。(敬称略)  メールに関して、☆を@に変換したメールアドレスにメール送信願います(スパムメール対策)

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